Voices

時々、記憶って悪い癖みたいだと思える。場所を変え、髪も染め、新しい食器まで買ったのに、スプーンがカップに当たる音にまた彼女の声が聞こえる。すべてが新しくなったはずなのに、なぜか静寂のたびに昔の「君」が聞こえる。

歌の中では、言い残された言葉が空気を震わせている。過去からの逃避は、円を描くマラソンへと変わり、そのゴールは、決して開けないと誓ったあの扉の前だ。その声は夢の中から聞こえてくるかのようである。柔らかく、しかし、内なるエコーの故障のように、どうしても消せない、しつこいものである。そして、その歌は愛についてではなく、誰かの声がまだ心の中で響いている限り、本当に忘れることは不可能であるということについて歌っているように思える。